非常識の人 吉本隆明

あんまり僕は吉本隆明氏には明るくない。最近、合田正人がいかに自分は吉本隆明から影響を受けたかを告白した本を読んだけど、まああまり面白くなかったし、確かに氏は吉本隆明からの影響が強かったにせよ、それだけでは吉本評価には繋がらない印象ではある。

なお、他にも鹿島茂が吉本を褒めちぎっていたけれど、僕にはその神がかり方が気に入らなかったし、何よりもその影響を受けたらしい、京大名誉教授の竹内洋が私的文化革命を展開している。喜劇なのか悲劇なのか正直よく分からない。

はっきりいえば吉本は害悪であった。どの意味でかというと戦後民主主義擬制の終焉、という言葉で葬ったし、非国民を思わせるような言葉で、非日本人、とか無日本人とかいうタームを使った。はっきり言って、大衆といえばなんでも許されるような精神構造をもたらした、という意味で、吉本は害悪である。

だがしかし、今日は吉本が亡くなった日であるから、批判をするのはよろしくないと考えることもできるだろう。褒めるとしたらどこかというと、まあ鹿島や合田というような人たちに思考のスキームを与えたという点だろう。教養人では吉本を敵視する人が多いとはいえ、民間レベルでは支持された人である。民間的な集合的意識を重んじた吉本はそこそこ評価できるが、いつまでもそれが最新とはいかないだろう。

土民・吉本隆明は今日去って行った。僕たちはもう少しまともな文化をこれから作らないといけない。吉本さん、あなたは少し長生きしすぎましたよ。