前期、今期アニメについての逡巡


 まず最初は、今期は大阪、関西の方が放送時期が早いという、ピングドラム。なかなか魅力的で、「生存戦略」という叫び声が耳に残っています(笑。星野リリィ起用と言うことですが、その影響はキャラクターにあるというのではなくて、小道具や背景にあるのではないかという、マンガ研究者のヤマダトモコさんの指摘は興味深かったです。

 http://twitter.com/yamatomo413/status/94474961653211136

 ヤマダトモコさんは最近ですと、オトメコンティニュー誌で山岸涼子萩尾望都のインタビューの聞き手と全作品の年表を作られていました。掲載誌もチェックするなど、レベルが高い仕事だなあと思いました。こやつですね。

 http://www.ohtabooks.com/otome/

 ピングドラムはこれからどうなるんだろう、と考えるとちょっと分からないですね。進展もそれなりに早いので、ピングドラムが何か、という点も含めて明らかになるのも早いのかもなあ、とも思うのですが、ウテナでいうところの、「世界の果て」のようにも響いてしまって、「ピングドラム」もたどり着くことのできない目標として曖昧なままなのかもなあ、と感じてしまいます笑。所詮僕の経験値ではこれからこの作品がどういう経緯をたどるかは分からないのですよね。汗。(僕が知っているのは、ウテナの監督とピングドラムの監督が同じ人ということくらいですし(^^;))


たまごまごさんのピングドラムには、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」がモチーフとして出てくる、というご指摘は面白かったです。

 http://d.hatena.ne.jp/makaronisan/20110712
 
いや、すごいなあと。

 他に今期アニメで面白かったのは、中2病コンテンツとしては「セイクリッドセブン」、「ダンタリアンの書架」、お色気としては「まよチキ!」、「魔乳秘剣帖」、ロリっぽいのは「ロウきゅーぶ」、「ゆるゆり」あたりなのでしょうか。この図式で行きますと前期アニメでは、

 中二病コンテンツ「電波女と青春男」、「灼眼のシャナ�」、お色気は「聖痕のクェイサー�」、ロリっぽいのは「アスタロッテのおもちゃ!」、「緋弾のアリア」、「戦国乙女」などなど。ちょっと図式に当てはめづらい。

 前期からの継続としては、「シュタインズゲート」、「タイガー&バニー」、「日常」がありますが、かなり粒ぞろいです。面白いとしか言いようがなく、特にタイバニの深夜ネット視聴は4万人にも達しました。(もっと多いときもあったと思いますが) 人気が伺えますし、なんと台湾でもオンリーイベントがあったそうな。すごいですねえ。

シュタインズゲート」は考えてみればそこまで山や谷がなく、無理のない展開で話をつないでいるのがすごいなあと思います。しかも面白い。視聴者は主人公の岡部倫太郎(鳳凰院凶真)の中二病的性格に苦笑しつつも、いつのまにか引き込まれていると思います。中二病で始まり、混沌としてる世界や未来への参加で終わるような話になるのではないでしょうか(今は幼なじみのまゆしぃを救っている途中ですね)。中二病という意味が変わるような作品だと思います。香山リカは震災前に大きな物語を喪失していた統合失調症の若者が、震災後は意味や意義を見いだすようになったことを(こういうふうに復権することは望んではいないのだと、)嘆いていますが、そうした流れにあるような作品かもしれません。中二病という個人の世界に引きこもっていた若者が、世界や未来へと立ち向かわなくてはいけなくなる。そういうテーマを含んでいるので、ちょっと「シュタインズゲート」からは目が離せません。

僕は前期、今期ともに「日常」が一番優れているアニメになると思います。マンガの「日常」ベン・シャーンのような描線に、シュールなギャグが持ち味なのですが、非日常でありながら日常を暗示しているような作品で、表現として面白いなあと思う訳なのですが、アニメもマンガも今年は「日常」というコンテンツを語り尽くせたらそれでいい年だと自分では思っています。^^ 本当に自分が言うようになっているのかなぁ。アニメ放映では「日常」という怪作を京都アニメーションがどれくらいアニメにできるかという、戦いだと思っています。正直、面白いです。

ただ、気になるのが今期から入ってきた「バカとテストと召喚獣にっ!」です。いまのところ、声優の磯村知美が活躍しているのがこの作品だけ、というかなり趣味的な作品のように思えます。

イソッチ様 (^o^)

http://game.biglobe.ne.jp/colweb/shoku/index.html#profile

前にも言ったと思うのですが、今では「ゲームの食卓」なのですが、昔はインプレス系の番組を仕切っていたと思います。たぶんこの5,6年インターネットラジオでご活躍されているご様子。最初、バカテスのエンディングで名前を見たときは我が目を疑いました。だって声が違うし。(イソッチさんはいつも明るい声ですが、役の霧島翔子の方はかなり大人しめ。)ゲームクリエイター須田剛一などもお知り合いなので、もっとご活躍して欲しいのですけど。


そういうところも含めて、趣味的なバカテスが最強のコンテンツである「日常」に勝てるのかなあ、というのが僕の関心です。(僕の知り合いのマンガ作家さんによると、「日常」の作者さんは二三年前の飲み会で一番最初に社長を名刺に渡していた優良株とのことです。)両作品ともクオリティは結構高いと思うのですが、クオリティ勝負にはおそらくならないでしょう。どちらが特色のある、アニメを展開できるかと言うことです。たしか2回目の放送では「バカテスにっ」、は男が女装しなおかつ美少女コンテストに参加するという回でしたが、最初からケンカを売っているような出来です。ツイッターでは美少女コンテストとか大学のミスコンなどはなくすべきだ、というフェミニズムっぽい意見で沸騰していたこともありますが、まさしく、男もそうした女の価値評価の世界へと投げ込まれることを実感を持って示した作品であるでしょう。半端ないです。3回目では、ヒデヨシと双子の姉が入れ替わる物語で、古典的なモチーフですけど、ジェンダーを考え直す作品ですよね。そういう男女の越境の物語が、おそらく「バカテス2」の無二のテーマなのでしょう。そういう意味からでも一定の評価は出来る作品なのではないでしょうか。

それに加えて「バカテス2」はギャグアニメであります。ギャグアニメというのは、僕の見た感じですとこれまでなかった領域なのではないかと思ってしまいます。近年の大ヒットアニメはだいたいがSF(「マクロスF」など)であったり、ストーリーもの(「ナルト」や「鋼の錬金術師」)であったと思います。これらの作品では、ギャグというのはワンシーンにのみ生きているような効果や手法だったのですが、基調としてギャグをとっているアニメ作品は珍しいといえるでしょう。あまりよく分からないのですが、もしかしたら押井守監督の「うる星やつら」くらいかもしれない。なんかよく分からないのですけど、マンガ以上に、アニメではギャグというテーマは貫徹されないのです。ギャグでお茶を濁すくらいなら、きちんとしたストーリーを作るのがアニメらしい、制作者側はもしかしたらそう思っているのかもしれない。

まあ「バカテス2」はそうしたギャグアニメの復権を告げているのかもしれません。「バカテス2」と「日常」の戦いは単に面白いかどうかではなくて、ギャグアニメとしてどちらが洗練され、表現として面白いかという戦いかもしれません。いまのところ「バカテス2」のノリはよくあるマンガ的なノリjのギャグだと思いますし、「日常」の方が洗練されているかもしれません。とはいえ、評価の軸を変えるとまた違うものも見えてくるのではないか、と思います。

ちょっと最近長文が苦手というか、逃げていたので(笑、更新遅れてすいません〜。汗汗。


それでは、また。